高松のレクザムホール(高松市玉藻町)大ホールで12月26日、「かがわ文化芸術祭2021」参加公演「響け!駅ピアノ」が上演される。
さぬき市を拠点に活動する「劇団プチミュージカル」第64回公演の脚本と音楽を担当するのは、元長尾小教諭で作曲家、脚本家、劇団指導者の白川恵介さん。
物語は、斜面を行ったり来たりしながら上っていく「スイッチバック」と呼ぶ方式の停車場がある町を舞台に、廃校寸前の小学校に通う6年生の少年少女が、音楽との関わりを通して、悩みや苦しみを乗り越えていく姿を描く。
主人公は、温泉宿の娘で好奇心旺盛だが何事も長続きしない性格に悩む6年生の「かずね」、同級生として転校してきた母の病死から立ち直れない少女「めろ」、吃音(きつおん)でいじめられた過去に苦しむ少年「りつ」の3人。3人が駅でほこりをかぶったグランドピアノを発見したことをきっかけに物語は動き出す。
白川さんによると、同作のテーマは「音楽の力」で、制作のきっかけとなったのは、インドネシアのジャワ島で戦争捕虜として一生を終えた日本人・佐藤源治さんが作った「僕は唱歌が下手でした」という詩だったという。歌が下手で笑われていた佐藤さんが収容所で「母さん恋し」を歌った時、その場にいた全員が泣き出したという内容。
この話から白川さんは「音楽はうまい下手や才能といった表面的な部分だけで語られることが多いが、その真の力は人の心に寄り添い、悲しい時は支えてくれ、うれしい時はその喜びを倍増させ、人と人とを分かつことなく、つなげてくれること。そんな人と音楽の関わり方を考えさせてくれたのがこの詩。このミュージカルでも、どんな時でも音楽はあなたのそばにいて力づけてくれるということや、自分の宝物のような音楽を心に持って人生を豊かにしてほしいというメッセージを伝えたい」と意気込みを見せる。
劇中には、白川さんが教師時代に作曲した「音楽のちから信じよう!」をはじめとして、演歌風、ロック風、ラップ風、ゴスペル風といったさまざまな音楽ジャンルが入り混じった30曲以上もの楽曲が登場する。中でも「同作のために書き下ろした「ピアノ協奏曲第2番ト短調switchback」を、劇中のコンサートとして生演奏で披露するシーンが一番苦心した場面で、最大の見どころ」だという。
「来春開催予定の『高松国際ピアノコンクール』も同様だが、ピアノ協奏曲は大きなピアノコンクールの本選でオーケストラをバックに弾く曲。ピアニストにとってこの曲を弾くことは夢の一つであり、駅ピアノから生まれた音楽が大ホールでのピアノ協奏曲につながるという壮大なドラマを体感してほしい」と白川さんは胸を張る。
「団体名に名残があるように、我々は元々、公民館などで公演する小さな劇団だった。それが高松のレクザムホールという大きなホールで上演するようになったことを皮切りに、宝塚ミュージカルコンクールでの全国優勝という快挙を経て、現在は約70人が所属する大きな劇団に成長している。その意味でもレクザムホールは思い入れのある舞台であり、たくさんの人に観劇に訪れてほしい」とも。
16時30分開演。入場料は一般2,000円(前売り1,800円)。ペア券は前売りのみで3,000円。ローソンチケットで扱っている。来年2月27日には、三木町の町文化交流プラザでも上演を予定する。