香川県漆芸研究所(高松市番町1)の研究生と講師が5月27日、讃岐おもちゃ美術館(大工町)を訪問した。
館内にある漆塗りの滑り台を制作した同研究所。この日は研究生25人と講師5人の計30人が中橋恵美子館長の説明を受けたり、館内のおもちゃで遊んだりして、楽しみながら施設を見学した。
見学中には、香川の銘菓「和三盆糖」をかたどった積み木がレザー加工でなく糸のこで制作されたものであることに驚いたり、使われている木の感触や木目に注目したりするなど、ものづくりの観点での見方をする場面もあった。
滑り台のアイデアを発案したのは、研究課程3年生の湊総子さん。「漆を使ったおもちゃを制作してほしい」と依頼があり、何を作るか研究所内で話し合った結果、滑り台のアイデアを提案したという。「積み木などの小さいおもちゃだと落とした時に欠けてしまったり、子どもが口にしたりするなどの恐れがある。会議が難航した時、半分思いつきで『滑り台だったら大きいし、使っていくうちに漆が剥がれ、下から模様が出てくるようにしたら面白いのでは』と提案したら、どんどん話が進み、実現することになった。自分の思いつきが現実のものになって驚いている」と振り返る。
4月に設置して以来、滑り台を見るのは初めて。「子どもたちが滑ったり触ったりすることで、設置した時よりも艶が出ている。漆器は布や肌、特に子どもの肌のようにきめ細かいものが多く触れると仕上がりもきれいになる。これからたくさんの子どもたちに利用される中で模様が出てくるのが楽しみ。滑り台を通して漆の手触りや温もり、艶を楽しんでほしい」と話す。
見学を終え、同研究所の古川京司(たかし)所長は「館内に置かれている工芸品一つ一つのクオリティーの高さに驚いた。制作に携わっている職人の方々もその道の第一人者ばかりで『香川の伝統工芸のオールスター』と言うべき顔ぶれ。工芸を楽しむ観点から見てもすごいし、それで遊べるというのは非常にぜいたくなこと」と総括した。