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館長に聞く!「屋島山上交流拠点施設『やしまーる』」ってどんなところ?

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館長に聞く!「屋島山上交流拠点施設『やしまーる』」ってどんなところ? 

 「瀬戸内国際芸術祭2022」夏会期の開始に合わせて2022年8月5日、屋島山上交流拠点施設「やしま ーる」が開館した。同館は2013(平成25)年、高松市が策定した「屋島活性化基本構想」の具体的施策・ 事業のうちの一つとして構想・設計され、「屋島の魅力や源平合戦、屋嶋城(やしまのき)などのガイダンス設備を備えるとともに、自然との触れ合い活動の場としても活用することにより、屋島を学び、魅力の 再発見に役立つよう、観光的な側面と文化的な側面を併せ持つ屋島の情報発信拠点として『ビジターセンター(ガイダンス施設)の整備』に取り組む」としている。ホールや広場なども備え、イベントやマルシェにも使える交流施設としての活用も目指す。 

 本記事では中條亜希子館長の案内の下、屋島山上に誕生したこの新たなスポットを見ていく。

1.施設紹介

 「やしまーる」は流れる川をイメージした、仕切りのない回廊型の施設です。正面玄関の「メインエントラ ンス」をはじめ、「カフェスペース」「展望スペース」「パノラマ展示スペース」「エントランス」「ローカル展示 スペース」「ホールスペース」を通路がつないでいます。

施設地図  

 以前この場所には旅館があり、土地も平らにならされていましたが、当施設建設に当たり、ならす前の状態に戻した結果、地面に3メートルの高低差が生まれました。施設としては6メートルの高低差があります。バリアフリーの観点から見ると不便かもしれませんが、電動車いすも貸し出していますので気軽にお声がけください。 

 回廊には所々狭い部分を設けています。これは屋島の緑、木々をより近くに感じてほしいという思いから設計されています。 

 それではメインエントランスから時計回りに案内します。 

カフェスペース  

 カフェスペースではドリンクやフードメニューを提供します。オープンから2カ月ほどは県内の飲食店が出店しますが、その後、当館オリジナルメニューに切り替えます。メニューには県内のビール工房で醸造するオリジナルビールなども置く予定です。

 カフェスペース近くの通路には当館オリジナルの土産コーナーも用意しています。オリジナルデザインのマイボトルや包むと屋島の形になる風呂敷型エコバッグ、また庵治石(あじいし)の端材を使った「やしマグネット」などを置いています。今後も庵治石を使ったグッズなどラインアップを増やす予定です。

 そのほか香川大学と企業が共同開発した菓子類や当施設の形をかたどったクッキーなどのお菓子類も置いています。当館の雰囲気に調和するデザインになっており、見ても楽しめる工夫がされています ので、ぜひ一度手に取っていただきたいですね。

 

展望スペース  

 西向きの「展望スポット」からは讃岐平野や瀬戸内海を一望できます。天気が良ければ本州や瀬戸大橋の他、金刀比羅宮(琴平町)のある象頭山も見られます。

 屋島からの景観は「日本の夕陽百選」や「日本の夜景100選」にも選ばれています。金曜・土曜・祝前日は夜21時まで開館しています。時間とともに刻一刻と変わっていく様子は本当にロマンチックなので、デートスポットにもお勧めです。

 

パノラマ展示スペース  

 この場所では「屋島の戦い」を描いた縦約5メートル、横約40メートルのパノラマ作品を展示します。「屋島の戦い」は「那須与一の扇の的」「義経の弓流し」などの有名なエピソードで知られるとともに、戦いに敗れた平家が四国の拠点を失い、最後の「壇ノ浦の戦い」に向けて動いていくという重要な戦いでもあります。パノラマ作品は日清戦争・日露戦争のころは国民の士気高揚のため盛んに作られ、浅草や県内では琴平にも「パノラマ館」があったと記録に残っています。ただ、現存するものはなく、完成すればこの作品が現在の日本に存在する唯一のパノラマ作品になります。作者の保科豊巳さんも「これほどのものを作るのは一生のうち、これが最初で最後かもしれない」とおっしゃっていました。9月29日からの秋会期の公開に向け、現在、制作中です。

 

関連記事:高松・やしまーるで「屋島での夜の夢」公開 日本で唯一のパノラマ館(2022年9月30日 掲載)https://takamatsu.keizai.biz/headline/325/

ローカル展示スペース  

 ローカル展示スペースはこれから屋島の歴史や自然、文化などが学べる展示物を置いていく予定です。オープン当初の今は当館の建設の記録、設計図などを展示しています。

 

ホール  

 当館の中で一番広い空間がこのホールです。オープン前日の8月4日に開かれた落成式はこちらで行 いました。ここは交流イベント、ワークショップ、企業や地域の会議・会合、子どもたちの学習の場など、 さまざまな用途での使用を想定しています。広さは約90平方メートル、パーテーションを外し、窓も開放することで外まで人を集めることができます。最大90人程度の利用が可能で、スクリーンやプロジェクターも用意しています。 

2.交流施設として

 ここまで施設や展示を中心に紹介してきました。市民の皆さんが気になっているのは「ここで何ができるの?」ということだと思います。まず、屋島の自然、文化、歴史などが知れる場所ということで学習の場として使用を考えています。 

 施設には野外広場も設けており、イベントやマルシェなどの会場としての利用も想定しています。

 直近では、3年ぶりの開催となる「屋島山上ちょうちんカフェ」や音楽イベント「天空ミュージック」を開催予定です。 

 一般の方への貸し出しは今年の瀬戸芸が終わった後、11月からを予定しています。電話で受け付けるほか、観光サイト「All Yashima」にも受付フォームを用意します。

3.時間・季節と共に姿を変える「やしまーる」

瀬戸芸の作品として  

 瀬戸芸の作品の一つである当館。時間とともに印象を変え、夜には館内外がライトアップされます。

 

 夜には「れいがん茶屋」の前で瀬戸芸の夏会期の作品である渡辺篤さんの「同じ月を見た日」プロジェ クトの「月はまた登る」を上映します。世界各地から募集した月の写真を一つの映像にまとめた作品です。今日みたいな日には本物の月を並べて撮るのもいいですね。 

4.拠点施設として・「やしまーる」の目指すもの

拠点施設として  

 当館は屋島山上の観光拠点施設としても建てられました。豊かな自然に恵まれ、全体が国の天然記念物に指定されていると共に新屋島水族館、屋島寺、屋嶋城(やしまのき)、古墳など歴史的・文化的スポットも多くあります。訪れた方が「『やしまーる』の次はここに行ってみよう」と思っていただけるような 「拠点」でありたいと考えています。そのために他のスポットへの案内も行っていきたいです。 

館長の思い・「やしまーる」が目指すもの  

 かつて屋島には年間約250万人の観光客が訪れていましたが、観光客数は減少し続けており、昨年はコロナの影響も受け、35万4000人までになりました。当館はそんな屋島を再び活性化するための拠点となるべく誕生しました。「地元の方が誇りに思える場所」「県外からのお客さまを案内したい場所」であり続けるように、さまざまな取り組みを行っていくので注目してくださいね。

ドローンによる鳥瞰(ちょうかん)写真  

編集後記

 屋島の新たなスポット「やしまーる」。ガラス越しに見える緑や屋島からの景観がすてきで、この日は長さ約200メートルの回廊を5周もしてしまいました。 

 高低差があり、やや癖のある場所ではあるとも思いますが、外観や構造はなかなか他で見られるもの ではなく、その個性を生かすことでイベント会場として面白い場所、何度も行きたくなる場所になるのではないかと思いました。 

 この「やしまーる」が屋島を訪れるきっかけとなり、また屋島観光の再興、観光整備につながる場所になることに期待します。 

営業時間:月曜・水曜・木曜・日曜=9時~17時、金曜・土曜=9時~21時。火曜定休。

関連記事:高松「屋島山上交流拠点施設」の愛称「やしまーる」に決定

 https://takamatsu.keizai.biz/headline/178/

 

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