小麦粉もいりこも使わない「新たな讃岐うどん」の開発とそれを提供する店を作るプロジェクトが発足し、5月12日、高松・庵治町で記者会見が行われた。
プロジェクトを指揮するのは香川のデザイン会社「人生は上々だ」(高松市牟礼町)。これまでも手がけたイベント「サヌキリミックス」や「サヌキボーダーレス」でプラントベース料理を提供してきた。小麦粉の代わりに米粉を使うとともに、スープにいりこでなく野菜などを中心に使い、「世界中の80億人が食べられる讃岐うどん」の開発を目指す。
プロジェクト発足の経緯について、同社の村上モリロー社長は「長男がアレルギーを持っており、土産のお菓子を買う時に気を遣う場面が多いことがずっと気になっていた。ある時、ビーガンレストラン『菜道』(東京都目黒区)チーフシェフの楠本勝三さんから、アレルギーなどの体質のほか、宗教や思想で讃岐うどんを食べられない人は多くいることを聞き、香川のソウルフードであるうどんを楽しめない人がいることはもったいないし、悲しいと感じた。『うどんは小麦粉で作るもの』と言うのも一つの『先入観』、それを打ち壊し、体質や宗教、思想関係なく同じテーブルを囲み、楽しめるものを作りたいとプロジェクトを立ち上げた」と話す。
会見では村上社長のほか、楠本さん、高松琴平電気鉄道の真鍋康正社長が登壇。イベント中はうどんに使われる予定のトマトをろ過し、「水分を一切加えず作った」スープが振る舞われた。
「サヌキリミックス」などのイベントでも料理を監修した楠本さんは「宗教や思想上の理由で讃岐うどんに使われるみりん、いりこ、カツオなどを食べられない人がいる。動物素材に加え、ネギやニラなどの野菜を口にしない『オリエンタル・ベジタリアン』もいる。それらの人も口にできる素材を使って開発しているが、そこだけに向けたものでは『食の多様性』にはつながらず、料理としても成立しない。うどんを食べ慣れている香川の人にも選択肢として選んでもらえるようなものを作りたい」と意気込む。
真鍋社長は「電車などの公共交通機関は車を運転できない人々にとってなくてはならない交通手段。公共交通機関は『誰もが乗れるもの』であるべきと考えており、その思いは今回のプロジェクトにつながると感じた」と話す。
会見を終え、村上社長は「このプロジェクトを立ち上げたもう一つの理由に『デザインやクリエーティブの価値をもっと多くの人に知ってもらう』ことがある。香川県は自己肯定感が低い人が多いと聞く。そんな中でクリエーティブを通して世界に通用・発信するものができれば香川に住む人の自己肯定感も高められると思い、身近なうどんを題材に選んだ」と話す。
同プロジェクトでは今年12月、拠点となる実店舗の開業を同所で予定している。「出店場所は自分が生まれ育った場所で実家もすぐ裏にある。地元をはじめ、県外や国外の人にも愛される、交流の生まれる場所を作りたい」と意気込みを見せる。