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高松・玉藻城公園「桜御門」が復元完了 記念式典も

桜御門外観

桜御門外観

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 玉藻城公園(高松市玉藻町)の「桜御門」が復元作業を終え、7月16日から一般公開される。

左官によるしっくい塗り作業の様子

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 1587年、生駒親正によって築かれ、江戸初期に松平頼重によって今の形に整備された玉藻城。明治時代に入り、天守閣をはじめ多くの建物が老朽化を理由に取り壊されたが、桜御門は取り壊されることなく残り、1944(昭和19)年には旧国宝(現在の重要文化財)への指定も内定していた。ところがその翌年の高松空襲によって城門は焼け落ち、以降石垣のみが残されていた。

 復元作業は2011(平成23)年、発掘作業から始まった。通常、歴史的建造物の再建で枷(かせ)となるのが文献など記録の不足だが、桜御門は近代まで残っていたため鮮明な写真も多く残っており、城門内に出入りした人への聞き取り調査もできた。一方で大きな困難となったのが木材の調達。高松市埋蔵文化センター館長の舩築紀子さんは「城門に使うためにはある程度育った材木を使う必要があるが、県内で城門に使えるくらい育った材木が見つからなかったので日本国内から探す必要があり、1年を木材の調達に費やした」と振り返る。

 復元作業は慎重に、なるべく当時の技法を再現することにこだわって進められた。木材がどのように削られたか、城内の水手御門や旭門の柱を研究し進めたほか、城門の瓦は出土したものを参考にして再現。石垣の石は空襲で表面が赤く変色するくらい劣化したものもあったが、オリジナルの石垣の持つ文化財的情報を残すため、載荷試験や強度調査も行い安全性を実証したうえで、ボルトでつないだり、かすがいで補強したりするなど、必要最小限の補強で修復した。積み直す作業も「1日1つが平均ペースで、2つ積めたらかなり進んだと言える」(舩築さん)くらい慎重に進められたという。

 同門南部で7月16日、復元完成の記念式典を開く。オープニングは高松城鉄砲隊による演武、県の無形文化財である「庵治締太鼓」で始まり、園内の「披雲閣」で開かれる本会では御殿女中が地元の民謡「一合まいた」などを披露。城門内部の展示施設の見学会も行う。

 今回の復元について、舩築さんは「当時からあるものをなるべく使ったり、伝統的な手仕事でしか解決できないことは職人の技能で解決したりしているが、当時と違って現代は耐震基準なども求められる。クレーンや電動工具をなどの現代の機材や、屋根の下地の防水・耐熱シートなど現代の素材を使って災害対策、耐久性の向上にも努めた。石垣解体に伴う発掘作業では門が江戸時代に複数回改修を受けていることが分かった。今回の復元で完成した桜御門は築城当初から残っていたものではなく、何度か建て替えられた門の最終形態」と話す。「今回の記念式典をはじめ、史跡の価値を発信していくことで文化財を未来に継承する原動力となるはず。今後も取り組みを続けていきたい」とも。

 記念式典は9時から行い、本会の公演は10時と11時の2回行う。

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