高松琴平電気鉄道(ことでん)が9月1日、志度線・琴電屋島駅(屋島中町)の駅舎解体工事を始める。同社が8月28日に発表した。
現在の駅舎は、屋島登山鉄道が開業した1929(昭和4)年に建てられた。軒の出が浅い緩勾配(こうばい)のスレート屋根や凹凸を抑えたシンプルな外壁などのモダンな意匠が特徴。屋島観光を支えた昭和初期の大衆文化を物語る建築物として、2009(平成21)年には経済産業省の「近代化産業遺産」に認定された。
同社によると、今年6月の台風6号による被害を受け、建物の安全性について調査・検討を進めてきた。老朽化が進んでいることも踏まえ、利用者の安全を最優先に考えた結果、解体を決めたという。
突然の発表を受け、インターネット上では惜しむ声が上がっているほか、駅舎の姿を一目見ようと現地を訪れる人もいる。高松市在住の60代女性は「子どもの頃、元日にいとこたちと屋島駅までことでんに乗り、ケーブルカーで屋島山上に上がって初日の出を見に行くのが恒例だった。帰りのケーブルカーから屋島駅の入り口まで坂道を競走したが、一番年下の私はいつも最下位で、泣きながら電車に揺られて帰った。中学の頃には駅近くに住んでいた憧れの先輩がいて、自転車で先回りして駅舎の中で待ち伏せし、陰から様子を見るのが日課だった。さまざまな思い出の詰まった場所がなくなるのは寂しい」と振り返る。
工期は9月1日~10月31日を予定。期間中は駅舎横に仮設通路を設けてホームへの動線を確保する。同社は「長年親しまれた駅舎がなくなるのは誠に残念だが、解体後も安心して利用できるよう必要な駅設備の整備・維持に努めたい」としている。