香川を拠点に活動する切り絵作家・長谷川隆子さんの企画展「刻(とき)の方舟(はこぶね)」が現在、高松市塩江美術館(高松市塩江町安原上、TEL 087-893-1800)で開かれている。
絶滅危惧種やすでに絶滅した動物たちの姿を切り絵で表現した「刻の方舟」
長谷川さんは、四国の和紙を素材に、地域に残る民話や伝承、歴史や文化を作品に反映させ、切り絵と照明による光と影を生かした大型のインスタレーションを展開している。同展は3部構成となっており、会場のホールに入って正面に現れる新作「刻の方舟」は、旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」をモチーフに制作し、暗闇の中に絶滅動物や絶滅危惧種の姿を浮かび上がらせる。
「描かれている動物のうち、絶滅危惧種は2匹のつがい、絶滅動物は1匹だけ配置している」と明かす長谷川さん。「環境破壊や乱獲など人間たちによって命を脅かされている動物たちが人災から生き延びるための舟を探し求めているのではないかと箱舟を題材にした。ノアの箱舟の話で動物たちはつがいで舟に乗せられ洪水を免れたが、つがいのいない生き物は果たして救われたのだろうかという疑問から、絶滅した動物たちは1匹だけ配置した」と話す。
切り絵で作るメッセージや作品制作で出た紙の切れ端を詰めた瓶などが展示されたショーウインドーの先にある企画展示室では、2025年に愛媛県立とべ動物園(愛媛県)の旧インドゾウ舎で発表した作品「まなざしの森」を再構成し、展示する。
長谷川さんは「企画展示室の天井は船の骨組みをモチーフにしていると聞いたことがある。入ってすぐ展示されている『刻の方舟』から始まってショーウインドー、そして塩江の山々が見える企画展示室へ続くルートによって、方舟に乗った動物たちが塩江の自然の中に解き放たれていくように見える展示にした」と話す。「社会問題はなかなか答えが出せないものも多い。今回の展示も立ち止まって考えるきっかけにしたいと思い、ショーウインドーのメッセージは文字の方向をそろえず、少し読みにくくしている。『まなざしの森』の制作で動物園は絶滅しそうな生き物たちを保護する役割があることを知り、動物園には楽しいだけではなく社会的な側面もあると知った。この展示が命と向き合うための時間を伴った体験になれば」とも。
関連イベントとして、7月26日には紙とライトを使って変幻自在に変わる影の形を楽しむワークショップ「影の実験室」を開く。開催時間は13時30分~15時。参加費は700円。要事前申し込み。定員は10人。
開館時間は9時~17時(入室は16時30分まで)。月曜休館(祝日の場合は翌日)。観覧料は、一般=300円、大学生=150円、高校生以下・65歳以上無料。8月2日まで。